– 旅先からの、友への便り。-
– 今を生き、今を愉しむ –
小暑 二〇二五年七月七日〜七月二十一日
暑中お見舞い申し上げます
変わらず元気にしていますか?僕はそのまま、盛岡で過ごしています。一時は三十度半ばほどの気温になり、二、三日はエアコンをつけたのですが、オホーツク海高気圧のおかげで昨日まで、やや凍えながら過ごしていました。いやぁ、すごいものですね。特に朝晩がこんなにも冷え込むなんて。逆戻りしたくないという意地もあり、僕はタオルケットだけで眠りましたが、再び毛布が登場することになりました。
望めばキリがないのですが、願わくば日陰や屋内は涼しく、日向ではキリッと暑さを感じる、そんな夏がいいなと思ってしまいました。そんな環境で、いかに心地よく昼寝をする時間を確保できるか。心地のいい昼寝は僕にとっての、佳き日々を彩る大切な要素です。エアコンによる涼しさではなく、できれば扇風機も使わなくていい環境での涼しさの中で、深く安心して眠ることを望みます。
そういえば、今回の冷え込みで、夏に凍えるのは辛い、という漫画のセリフを思いましました。確か、身を温める服や道具を収めてしまった後で、自分を温める術がないという状態を、主人公の心の冷え込みと重ねていたのだと。寒いなら押入の奥の方から出してしまえばいいのですが、僕のような意地っ張りは特に、そのまま過ごそうとしてしまうかも。意地も時には大切ですが、自分を温めることもまた大切です。
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そんな涼しい日々の中で、妻と街の方まで散歩してみました。目指したのは、盛岡の愛される地域の百貨店、川徳です。妻が神託カードを引いたら、散歩という言葉にひらめきを感じたようで。その日は曇りで、とても歩きやすかったです。あれだけ涼しかったので、陽に当たりながらの散歩も大歓迎だったのですが。竹原でも盛岡でも、家で過ごしていると歩くことが少ないので、とてもいい運動になりました。
家から川徳までは徒歩40分ほど。その時は、普段歩かない道を選びながら進んだので、一時間近くかかりましたが。歩く速さでまちを眺めるのはとても好きなので、ささやかに心が躍りました。まるで小さな旅をしているかのように。写真を撮る機会としても良かったし、きっとまた、何かが動き出したのだと思います。散歩もまた、僕の佳き日々を彩る大切な要素です。動く瞑想でもありますし。
その翌日は、三男と二人で虫取り散歩へ。急な決定による、時間が限られた中での散歩です。とりあえず家の近くの、虫が居そうなところを目指して歩いてみました。幸い、歩いてすぐのところで小さな白い蝶を見つけ、家に戻っていると黄金虫が道を歩いていました。小さなカゴの中に閉じ込めるのはかわいそうな気もしますが、可能な限りよき環境を準備して、ゆったり過ごしてもらうことにします。
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そんな、散歩のきっかけとなった神託カードなのですが、その時に僕が引いたのは、死と再生、を表すカードでした。今日がこの人生最後の日だと思って、思いっきり生きること。引いた時の問いかけは、僕が受け取るために必要なこと。すぐそこまで流れは来ているのに、僕の中に何か、受け取ることを拒む要素がある気がして。長年の課題でもあるのですが。もしくは、そう思い込んでいるだけなのかも。
ちょうどこの前、世を騒がせた予言の日がありましたね。そのおかげで、人生の終わりを想像した人も少しはいるのだと思います。結果として、自然なものも人為的なものもなく、日々はそのまま続くこととなりました。今のところは何もなくてよかったです。もしかしたら、転換期としての出来事が起きてしまうのかもしれませんが、人々が、この世界が無事に、前に進めることを祈ります。
そんなことを考える中で改めて、終わりに目を向けることは、今を生きるための重要な要素だと思えます。今日がこの人生最後の日だと思って過ごせるか。次があるのか、前があったのかはわかりませんが。どう終わりたいのも含め、自分に問いかけ続ける必要のある問いだと思います。そして、明日も続く世界のために、どんな種を蒔くのか。この矛盾した問いの組み合わせが、意外と好きです。
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話は変わりますが、妻の出店で秋田に行きました。目指した場所は、昨年の夏の、車旅の試みで一度通ったところで。去年と同じく、その道中で見かけた田んぼの広がりを見て、とてもありがたい気持ちになりました。僕らが主食として食べている米を、こんなにも作ってもらえているなんて。きっと、その時に見かけた田んぼの米を僕が食べているわけではないのですが、とにかくありがたいのです。
行きの車の中で話していて驚いたのが、妻は三年前の車旅以来の県外だそうで。あれから、そんなにも月日が経ったのですね。三年前の五月末から八月にかけて、妻と三男と三人で三ヶ月間の車旅をしました。往路は三十一日かけて竹原に向かい、遠くは別府まで。そこから大阪経由で再び竹原へ。そして最後は、竹原からは二十四時間で盛岡に戻りました。大変なこともありましたが、よき思い出です。
妻が焼菓子を販売している間、車のハッチを開けて昼寝をしたり読書をすればいいと考えていたのですが、さすがに暑くなって。それなので、三男と二人で秋田空港に遊びに行きました。初めての秋田空港です。屋上階には古い機体の操縦席があり、バッテリーカーもありました。ちょうど、久しぶりにプロペラ機を見れたのが嬉しくて。最近は、小さな空港の方が好きですね。人も多くなく、ちょうどいい感じで。
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さてさて。この先は更に気温が上がり、夏真っ盛りの時期となります。それでも盛岡は、西日本や都会と比べると涼しいのでしょうけれど。この暑中を、どうやってエアコンを使わずに涼しく過ごすのか。熱を防ぎ、風を取り入れ、視覚的にも感覚的にも、涼を感じられるようにして。そんなことを考えていると、昔の建物はよく考えられていたのだなと思います。積み重ねられた知恵といいますか。
小さい頃に蚊帳で寝た記憶が懐かしいです。街中であんな風に窓を開け放って眠ることはないのでしょうけれど、夜風が通って気持ちよかったな。そんな風に僕らは自然と共に生きているということを、いつでも思い出せるようにしておきたいです。温暖化に関しては懐疑的な部分も多いですが、自分達で首を絞めていることは確かなのでしょう。そういう点でも、ただ便利さを追い求めることに怖れを感じます。
とはいえ、何にせよ今の自分にできることから始める以外、より佳き世界に向かう術はないと思うので。自分の、安定のマイペースさで、この先も自分らの日々を積み重ねていきます。今日がこの人生最後の日だと思いながら。そして、明日以降の世界のために種を蒔きつつ。進む便利さと不便さの中にある大切なこととの、塩梅を見出しながら。穏やかに、緩やかに、今あるささやかな歓びを大切にできる自分で。
二〇二五年七月十四日

2025/07/02 MORIOKA / IWATE / JAPAN
Photo by Yutaka Kobayashi

2025/07/05 AKITA / AKITA / JAPAN
Photo by Yutaka Kobayashi

2025/07/12 MORIOKA / IWATE / JAPAN
Photo by Yutaka Kobayashi
おわり
” 「 歩く速さで 」では、旅先から届ける友人への便りとして言葉を綴っています。二十四節気の暦に沿ってお届けできたらと。そんな便りの中で僕の、日々の些細な出来事を通じた気づきを貴方に共有させてください。それが結果的に、互いが生きる日々にとって、より佳きものになれば幸いです。”
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これまでもこれからも
心がおどる、たのしい日々を。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございます。
– 自分らしく、しあわせに生きること –
COBAKEN LIFESTYELE LABO

1977年、広島生まれ。ファシリテーター。広島県竹原市と岩手県盛岡市の二拠点生活+旅。スキナコトヲ スキナトキニ スキナトコロデ、とういう生き方。ファシリテーターとして促すのは、目の前の相手の人生。
詳しいプロフィール ⇒ cobaken.net/profile