– 旅先からの、友への便り。-
– 風をつかむ –
寒露 二〇二四年十月八日〜十月二十二日
久しぶりのバックパックは中々重たかったです。車旅が続いていたので、自分の暮らしの道具が詰まったバックパックを背負う筋肉と気持ちが、薄れてしまったのかもしれません。一度リスケしたのもあって、今回の予定日はどうにか出発しようと準備を進めました。けれども、予定していた旅立ちの日は家で動けなくて。夕方までぼーっと過ごしてしまいました。
結果として今回の旅は、宮古と遠野と花巻を巡る、とても短いものになりまして。旅立ったのは、日中をぼーっと過ごしていた日の翌日です。旅先でまだ、内面が整っていないことを実感し、盛岡の家に戻ることを決めました。自分の直感を、素直に信じることができなくて。風が掴めないというか。とにかく、これは無理だなと。年を重ねたからか、引き返せるようになった自分に少し驚きながら。
宮古から三陸鉄道に揺られて、晴天の窓の外を眺めつつ、ベアレンの黒ビールを呑む。時折、本を読みながら。顔は真っ赤で、たまにウトウトしながら釜石まで移動しました。この時間が特に、自分が元々行っていた旅に近いなと。懐かしいです。当初と違うのは、効率や速さを求める感覚がないことですかね。不便でも便利でも、いいのだと思います。ただタイミングを信頼して生きられるかどうか、なのかなと。
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スキナトキニ、スキナコトヲ、スキナトコロデ。やっぱり僕は、そんな生き方が好きです。この言葉は自分にとっての豊さを表す言葉でもあって。その昔、自分は何のためにお金を稼ぎたいのかを考えた時の、理由の一つです。例えば友人の誕生日に、ふらっと友人の街を訪れて一緒に乾杯する。それを行うためにお金を稼ぎたいと、その当時に思いました。一緒に、それを実現できる時間を得ることも。
それを表してくれる言葉に、「 しあわせのパン 」という映画で出逢い、そこに少しだけ自分の言葉を足して使わせてもらっています。あの頃に思い描いていた程に飛び回ることは望んでいませんが、自分がその時に居たいと思える場所で自分の好きなことをして、この先も過ごしていきたいです。まずはタイミングを信頼して、その時その時にあるものに目を向け、自分の置かれている状況に感謝しながら。
それと、幅のある自分でいたいなとも思います。以前、マレーシアで出逢った人が言っていたのですが、「 私はスイートにも泊まるけれど、野宿もするよ。」って。自分もそれがいいなと思いました。そのくらい極端な幅の中で生きて、その時その時で自分の心に従い、自分が置かれた状況を心から愉しんで。ひと回りしたからか、最近はそんな、旅する暮らしの原点に触れる機会が多いような気がします。
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この旅立ちの際には、初めて福岡県柳川市のうずしおに訪れた時のことも思い出しました。久留米の街を歩きながら空を見上げた時、雲が南に流れていて。そのまますんなり、南に向かおうと思いました。その後に逢った友人にそのことを伝えたら、「 面白いところがあります。」と、うずしおを紹介してくれて。その時に受け取ったこのご縁もまだ続いていて、福岡を訪れた際に今も寄らせてもらっています。
そんな風に、いつも空を眺めて移動するつもりはありませんが、この世界の流れを受け取って、あの感覚をまた味わえるといいなと思っています。風に乗りながら、ご縁のある場所に訪れて。移動の最中に、自分が抱えたものは手放して、辿り着いたらきちんと重力を整えて。鳥が種を運ぶように僕も、生命やこの世界を紡ぐ大切な、けれども些細で身近な何かを運び続けられると嬉しいです。
種を蒔くこと、春を告げること、それが旅を続ける中での自分の役割だと思ってきたのです。自分にとっての種は ” 問い ” で、春を告げるというのは、” 前回との変化を伝えること ” だと解釈しています。その役割が果たせたのかどうかはわかりません。思い返してみれば、自然とそれができていた時の方が、人に喜んでもらえたように思えます。その部分でも結局、思考は手放した方がいいということですかね。
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僕らは、やる気が出るからやるのではなく、やった結果としてやる気が生まれるそうです。それなので今は心を休めつつも、暮らしに必要なことを淡々と行っています。小さなやる気を生み出し、蓄えながら。僕にとって一番の仕事は、自分の人生を生きることです。そのために暮らし、暮らすために糧を得る。この順番をきちんと守りながら、この先も日々を愉しんでいたいのです。
そういえば先日、ふっ、と消えてしまいたい自分がいました。実は先月半ば頃から、思考の端の、隅っこの方にそれがある感覚はありましたが。その時はきちんと感じ取れました。自分の内側から湧き出たものなのか、それとも何かに憑かれてしまったのか。その時は、自分でも危ういなと思えて。ちょうど、心身が疲れた感はありました。生きたい気持ちの裏返しというよりは、諦めた感からのその思いです。
幸い、今の自分が選ぶのは生きることなので、この感覚も貴重な体験として今後に活かします。そんな頃にちょうど見かけたのですが、死にもっとも近い概念は「 恥 」なのですね。罪悪感や無気力、深い悲しみよりも。デヴィッド・R・ホーキンズ 曰く。何となく、わかる気がしました。この先の、自分を癒す時や、誰かの癒しの場に関わる時に、この感覚が活かせるのかもしれません。
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秋の土用の期間にも入り、恒例の72時間の休肝日を設けました。ここ最近は、お酒を呑んでいる日が多いです。以前の自分からすれば、断然控え目ですが。家で、ウィスキーのロックかソーダ割り、もしくは湯割りを少々。久しぶりにバースプーンを使い続けて、懐かしい気分も味わいながら。家族と、気の置けない人たちと共に、お酒を呑みながら過ごす何でもない時間は、僕にとってとても重要な時間です。
大切なことを思い出させてくれたり、教えてくれたり。笑いがあり、温かい何かがあり、時に腹を立てたり。やっぱり、そこにあるものなのだなと、日々実感させてもらっています。外側にそれを求め、必死に探していた頃の自分に教えてやりたい気分です。けれども、そんな体験も貴重な、今に辿り着くために必要な要素。そんな自分も必要だったし、そのおかげで今があります。どうもありがとう。
寒露を迎えた今年の盛岡ですが、日中の暖かさが不思議な感じです。とはいえ着々と、季節は冬へと向かっていて。盛岡の家でもコタツやストーブが登場し、コタツは足元を温めてくれて、ストーブは出番がくるのを待っている状態です。ただ、扇風機もまだ部屋の中にありますが。そんな不思議な状況の中、次の旅立ちに向けての風が吹くのを待ちながら、マイペースに日々を過ごしているところです。
おわり
” 「 旅の途中の 」では、旅先から届ける友人への手紙、として言葉を綴っています。二十四節気の暦に沿ってお届けできたらと。僕の、旅する暮らしの中で起きる些細な出来事を通じて、ほっとひと息ついてもらえたら幸いです。”
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スキナトキニ
スキナコトヲ
スキナトコロデ
これまでもこれからも
心がおどる、たのしい日々を。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございます。
– 自分らしく、しあわせに生きること –
COBAKEN LIFESTYELE LABO
1977年、広島生まれ。ファシリテーター。広島県竹原市と岩手県盛岡市の二拠点生活+旅。スキナコトヲ スキナトキニ スキナトコロデ、とういう生き方。ファシリテーターとして促すのは、目の前の相手の人生。
詳しいプロフィール ⇒ cobaken.net/profile