カツカレーそば。【1枚の写真とひとつの物語 】#6




一枚の写真から綴られる、ひとつの旅の物語。


画像の説明


これは、カツカレーそば。私が盛岡に立ち寄ると必ず食べるもの。この、カツカレーそば、を初めて食べたのは、2014 年の 10 月。私にとって2度目となる盛岡だった。


私が初めて盛岡を訪れたのは、確か、2014 年の 3 月。青森にいる時、「 こばけんさん、盛岡に寄れないですか? 」と、その1週間か2週間前に沖縄から羽田へのフライトがたまたま一緒だった友人から急にメッセージが届く。それで私は、仙台に向かう前にひと晩だけ、盛岡の街に降り立つことになった。

盛岡の街で私を迎えてくれたのは、その連絡をくれた友人ではなく、友人の友人。その時に初めてお逢いした方。Facebook で拝見したことはあったのだが初めましての方で、びっくりドンキーの一号店として有名なベルで合流した時に、さらにふたりの方を紹介してくれた。


その中のひとりである、沼田雅充さん。フキデチョウ文庫というデイケア施設を運営されているのだが、街の図書館を併設した、とても特殊でとてもステキな空間で運営されていて、スタッフのみなさんや利用者さんで賑わう中、街の人たちが自由にこの場所を活用している。屋根のある公園、沼田さんはその場所のことをそう呼ぶ。

私は初めてお逢いした時の7ヶ月後、またちょうど岩手県に立ち寄る機会があったのでフキデチョウ文庫にお邪魔してみた。とても興味のある場所だったので。車を降りて白い建物の前に立つ。木と透明なガラスの入り口の引き戸の向こうには、木と白い壁に包まれたやわらかい空間が見える。中に入ると、外から想像していたよりももっと、やさしい雰囲気が奥に向かって広がっていた。

私が、地元である広島県竹原市につくりたい空間のモデルとなる、ここフキデチョウ文庫の在り方は、これから先、自分がカタチにしていきたいことをより具体的にイメージするために出逢うべき場所だった、と今では思う。そして、ここに集ってくる人たちとの出逢いがまた、私の人生をより明確なものにしてくれた。


そんな、自分が地元につくりたい空間のお手本に出逢った後、晩ごはんを食べに行くことになって、沼田さんから問われた。


「 何が食べたいですか?わんこそば食べますか? 」
「 わんこそば、って普段食べますか? 」
「 食べないですね。お客さんが来た時くらいです。」
「 じゃあ、普段食べるものが良いです。」
「 わかりました。だったら、カツカレーそば、食べましょう。」


そして車に乗り込み向かったのが、直利庵 ( ちょくりあん )、というそば屋さん。駐車場に車を停めて、駐車場の道路向かいにお店はあって、建物に向かって左側にある引き違いの格子戸をガラガラと開くと、1階のスペースは他のお客さんでいっぱい。1度外に出て、今度は建物に向かって右側にある引き違いの格子戸をガラガラと開くと、そこから靴を脱いで2階へと案内された。

こちらは椀子そばを食べる時に入る方なのだが座敷に腰掛けて、座卓の上にあるメニューに目を向ける。そこには「 カツカレーそば 」の文字があった。着物を来たお姉さんにそれを2つ注文して、私は心踊る、そんな気持ちでカツカレーそばの登場を待った。


とうとう目の前に表れたカツカレーそば。そばの器にたっぷりと餡がかったカレーとそばの汁が注がれていて、その中に大きく切られたネギとトンカツが浮いている。この下にそばが入っているのかどうか、それはこの時点では何の確証もなかった。とはいっても、そんな疑う気持ちもなかったのだが。

「 いただきます 」と手を合わせ、そしてゆっくりと箸を割る。キレイに割れた箸を汁の中に差し込む前に、まずはレンゲで汁を啜ってみた。餡がかったカレー味の汁はとても熱く、喉を刺激しながら流れていく。この感覚がたまらないのか、私は何度も汁を啜っていた。そして箸を汁の中に差し込んで、まずはそばを掬い上げてみた。きちんとそばはそこにあった。

そこからは、そばとトンカツを食べていく。当時の私は今よりもたくさん食べていたのだが、汁の熱さもあって、減るようで減らない。食べている中でどんどん、額や鼻の頭から汗が流れてくる。この時期でこれなのに、夏に食べるとどうなるのだろうか。そんなことを妄想しながら、私はついに、カツカレーそばを食べ終えた。お腹の中も、胸の中も熱い。


今では、フキデチョウ文庫から直利庵までは歩いていく。フキデチョウ文庫を出て肴町の商店街の入り口側、私の憩いの場となっている Nanak ( ななっく ) の前を通って盛岡バスセンターのある交差点へ。歩いてきたまま、そこをまっすぐ渡ってから右に曲がり、デイリーのある角を左に曲がると直利庵が見える。

初めてフキデチョウ文庫を訪れた以来、私は4月と9月に盛岡を訪れた。そしてその度にこの、カツカレーそば、を食べた。この、カツカレーそば、は私にとって、盛岡を表すもののひとつとなった。だから、カツカレーそば、は、私が盛岡に立ち寄ると必ず食べるものなのである。




実はつい先日、仙台で過ごしていた時、「 冬将軍 」という言葉にものすごく怖れを抱いた私がいた。その理由は、このまま仙台で過ごしていて寝床を確保できる実感がなかったから。その時、数日前に届いていた沼田さんからのメールを思い出した。「 よし、盛岡に向かおう。」そう思った矢先、沼田さんに連絡している自分がいた。

沼田さんからの返信は二つ返事で、あとは仙台から盛岡に移動するための手段を交換してもらうだけ。運よく、振り込み期限の 15 時までにバス代を交換してくれる人が表れたので、私は晴れて盛岡に移動することが出来ることになった。そしてその時、妙な安心感に包まれていた私がいた。


私は、フキデチョウ文庫、という空間、フキデチョウ文庫、というコミュニティが大好きだ。ここで過ごしているうちにたくさんの人に出逢い、ここを拠点として盛岡の街を歩き、自分の中にある程度の地図が出来た。やはり旅は人だと思う。人との出逢いが旅を決める。人との出逢いが思い出も未来も決める。


バスで盛岡バスセンターに到着したらそのまま、Nanak の道路向かいの道を大通りの方向に歩いて、セブイレブンのある角を右に曲がる。そこには見慣れた景色があって、その向こうに見える盛岡不動尊の赤い山門の向かいにフキデチョウ文庫がある。

今回、フキデチョウ文庫に到着してすぐ、沼田さんとスタッフさんと3人で、晩ごはんを食べに出ることになった。荷物を置いて外に出て、歩きながら3人で行き先について話をする。


「 何か食べたいものないですか? 」
「 カレーか、そばか、定食が食べたいです。」


最初は別の店に行こうとしたのだが、結果、直利庵に行くことになり、また Nanak の前を歩いてお店に向かった。まだ盛岡もそんなに寒くはなくて少し安心。何より、着いて早々、カツカレーそば、が食べられるのが嬉しい。例え、昼ごはんがカレーだったとしても。


やはり美味しかった。それに、自分が盛岡にいることを実感できた。沼田さんとカツカレーそば、これ以上に私が盛岡を感じられる組み合わせがあるだろうか。

この日の夜はまだ暖かい方ではあったが、広島生まれ、広島育ちの私としては寒さを感じる夜だった。だが、直利庵からフキデチョウ文庫までの帰り道、私はマフラーを首に巻いて、ジャンバーは手にかけたまま歩いて帰った。冷たい空気がとても心地よくて。身も心も満足した状態で、私たちはフキデチョウ文庫に戻っていった。




おわり




    


僕はこの5年で 1,500 泊以上、旅をしながら暮らすことに時間を費やしました。

その体験は唯一無二のもので、そこから得た大切なことを活かした僕との旅や対話の時間は、自分を生きることを望んでいる人にとって、とても価値があります。

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1977生まれの旅人。2012年9月から旅する暮らしを始めました。拠点は広島と岩手で、年の8割以上は日本かアジアのどこか。旅先で対話することを仕事にして生きています。詳しいプロフィール ⇒ 

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