初めての夏休みの、思い出のひとつとして。| 旅の途中の #012



Ver.1.0.0



– 旅先からの、友への便り。-






– 初めての夏休みの、思い出のひとつとして –


大暑 二〇二四年七月二十二日〜八月六日




 九月で七歳になる三男は、「 旅 」という言葉を使います。旅行に行きたい、ではなく、旅に行きたい、と。明らかに父親の影響だなと思うのですが、この表現を使う感覚が、この先の世でどのような人生を歩むことになるのでしょうか。そんな三男と二人で先日、三泊四日の旅に出ました。宮城県の名取と仙台、福島県の福島、三春、いわきを巡った、1,000km 程の車旅です。

僕が1ヶ月半ぶりに盛岡に戻った頃にはもう、夏休みは始まっていて。雪国の夏休みは始まるのが数日遅く、終わるのも早いので、とても短く感じてしまいます。自分らの頃との違いも実感しますし。それでも夏休みは、色んな思い出を生んでくれる期間であることに変わりはありません。この旅が、そんな夏休みの、愉しい思い出のひとつになれば嬉しいです。


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 出発の日は、七月二十六日の土曜日でした。その午前中、もう一台の車まで妻を送り、買い物などのいくつかの用事を済ませ、昼を過ぎてからの出発となりました。僕にとっては恒例となった、下道を延々と進む、のんびりとした車旅です。最初の頃に眺めた、盛岡暮らしで流石に見慣れてきた景色も、三男との旅の最中とあっては少し、目に留まるものも違う気がします。

その道中、スーパーでお菓子や果物を買ったり、コンビニで仮眠を取ったり。本州最大の面積を誇る岩手県を出るには時間がかかります。日が暮れ始めた頃、宮城県の大崎で見つけた温泉に浸かりました。湯が熱かったからか、三男はすぐに上がろうとして。そして、再び走り始めました。他に車の通っていない山道を越えると、ぼんやりと街の明かりが見えてきました。

目的地近くの回転寿司でお腹を満たし、あとは目的地まで行って、車で眠るだけ。目指すは、仙台空港の近くにある公園です。いつもの九時頃には眠らせてあげたかったですが、少し遅れて準備が整いました。今夜はここで車中泊。外にうっすら見える遊具が気になるようで。寝付くまでに時間はかかってしまいましたが、これで無事、一日目は終了です。


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 外の遊具が気になって仕方がない三男は、とても早起きでした。僕は睡眠不足です。そんな二日目の朝、仙台空港で大阪からの友人を無事、迎えることができました。ここがどこだかわからなくなるような、不思議な感覚ではあります。そして、人見知り発動の三男は驚くほどにそっけない態度。けれども、同い年の息子がいる彼女は、そんなものだと受け止めてくれます。

4号線を走り、トークライブの会場であるライブハウスに向かいました。今日はここで、大阪でいつもお世話になっている、姉同然の友人が登壇します。その会場での物販のために、空港で迎えた友人もやって来ました。そう言えば三男は、静かに過ごしていたと、イベントの女性スタッフから褒めてもらっていました。この旅は、母親以外の母性に触れる機会でもあったのかもしれません。

荷物を片付けると、再び仙台空港へ。友人は今日、大阪に戻るのです。空港に着いた時、三男は眠っていたので、静かに友人を見送りました。しばらくしてから目覚め、最初は大丈夫そうにしていたのですが、本当はとても悲しかったらしく、「 起こして欲しかった 」と泣き始めてしまいました。きちんと、心を開いていたみたいです。そのまま福島市内まで戻り、この日はホテルで眠りました。


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 三日目はまず、三春へ向かいました。二度目の正直。三春タイムズを買うならば、三春で直接買えばいいと思って。そのお店は、江刺の友人夫婦にとっての、東北の入口だと聴いていました。とても素敵なお店で、やはり現地に来てみるものだなと思えます。そういえば、三春タイムズのイラストは広島の方で。そんな話をしている傍らで、りんごジュースを一気に飲み干す三男。おかわりをしました。

そして、いわきへと向かいます。三男は二年ぶりに友達と再会です。それが、今回の車旅のメインイベントでもあります。そして自分には、晩ごはんにスパイスカレーを作るというミッションが。無事到着して、再会を果たしました。ほんの一瞬、静かではあったけれど、すぐに一緒に走り回り始めて。一緒に買い物に行って、花火をして、お風呂に入って。

晩ごはんを一緒に食べ終えた後、三男の友達とその母親である友人は自宅へと帰って行きました。今夜はその友人が管理している場所に泊まらせてもらいます。片付けや寝る準備を終え、三男が眠った後に風呂に入ろうと思っていたら、寝ている間に一人になるのが怖い、ということで。今夜も少し、眠りにつくのが遅くなりました。


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 友達に別れを告げ、いわきを出発しました。沿岸部を通りながら、仙台へ。目指すのはポケモンセンターです。その道中、津波のこと、原発のことなどを、三男と話しながら。数年前、津波が怖い、と言い続けていた頃があったのですが、今はこうして、ただ怖がるのではなく、話を聴けるようになっていました。しかし、人が居ないままの町の雰囲気は独特です。人が生きる音があってこその町なのです。

段々と都会になり、見慣れた景色が見えてきました。停めて、西口へ向かいます。仙台パルコにはガンダムベースもあることがわかりました。そこで、盛岡の友人にプレゼントする予定のプラモデルに出逢ってしまって。これは購入するしかありません。三男も自分でプラモデルを購入し、自分で作ってみることにしました。ポケモンセンターでは、エネルギーカードを購入して。

晩ごはんを食べ終え、最後は高速を使って一気に盛岡に戻ります。この道中で何度もあったのですが、三男は眠たくなると自分でシートを倒して眠りにつきます。着いたら起こしてね、と一言添えて。空港で見送ることができなかった時から始まった一言なのですが、そこに彼の何か、怖れの根源と言いますか、この先で自分と向かい合う部分があるようです。そして、無事に家に戻りました。


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 妻と三男が別々の場所で眠り、別々の時間を過ごすこと。計画した当初は、それが一番の目的でした。自分が旅に出ている間、ずっと二人で過ごしていることで上手くいっていなかったことが、上手くいくきっかけになればいいかなと。二人が別々に眠るのは、これが二度目のことで、一度目は盛岡市内のホテルに一泊だけでした。

それと、小麦粉と乳製品を抜いている三男との旅は、食べる物の選択肢が少なく、大手のアレルゲンメニューに頼ることが多かったです。情報を持ってさえすれば、もう少しどうにかなったのだと思います。盛岡で過ごしている時にも感じていたことですが、こんなにも日本には小麦粉が使われているのだと驚いてしまうのです。もう少し、バランスを取り戻していい部分かもしれません。

あと、車中泊も一人と二人とでは違っていて。後部座席を倒し、後ろに二人並んで横になるのですが、マットを敷くスペースの確保や、室温の上昇の早さだったり、一人の時とは勝手が違います。ちょうどその日は涼しく、借りていたポータブルバッテリーを使って回したサーキュレーターのおかげで、程よく涼しく眠ることはできました。


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 何にせよ、いつもの一人旅とは違う、よき時間を過ごすことができました。大変に感じることもなく、とても豊な時間だったと思います。二年前の三ヶ月の車旅ともまた違った、穏やかな時間を過ごすことができました。同じ景色を眺め、同じ体験をして。共通の思い出がたくさんあること。それはとても幸せなことだと改めて思いました。そして、長男や次男ともこうして旅ができるといいなぁ、とも。


とにかくこの、三泊四日の車旅が、子供の頃の夏の思い出のひとつとしていつか、ふとした時に思い出してもらえると嬉しいなと思います。




2024/07/29 FUKUSHIMA / FUKUSHIMA / JAPAN
Photo by Yutaka Kobayashi




2024/07/29 IWAKI / FUKUSHIMA / JAPAN
Photo by Yutaka Kobayashi




2024/07/29 IWAKI / FUKUSHIMA / JAPAN
Photo by Yutaka Kobayashi






おわり




” 「 旅の途中の 」では、旅先から届ける友人への手紙、として言葉を綴っています。二十四節気の暦に沿ってお届けできたらと。僕の、旅する暮らしの中で起きる些細な出来事を通じて、ほっとひと息ついてもらえたら幸いです。”




    




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