それが何よりのこと。【1枚の写真とひとつの物語 】#7



一枚の写真から綴られる、ひとつの旅の物語。

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ポカポカとした 10 月始めの午後。稲刈りを終えた田んぼの間をのんびり歩く。僕の地元である広島県竹原市では見かけたことがない、この刈り取った稲の干し方。テレビや写真では見たことがある。まるで蓑を羽織ったようなその姿。そして刈り取られた田んぼの横には、蕎麦らしきものが育てられていた。


ここは、宮城県大崎市。鳴子温泉郷のひとつである川渡温泉。私は湯治の宿に泊まって2泊の湯治を楽しんでいた。東五郎の湯 高東旅館、という名前の、このエリアでも今ではめずらしい自炊の宿のひとつ。この宿のことを教えてもらい、ふと思たってここにやってきた。そして今日は二日目の午後。

自炊の部屋と食事付きの宿泊ができる部屋と、2種類の宿泊方法がある。昨日の午後、仙台からバスに揺られ、そしてバス停から歩くこと5分強。こうしてこの宿に到着した。宿に到着して自炊棟の玄関を入ると左右に長く廊下が続き、部屋に入るドアが均等な間隔で並んでいた。

右手には2階に上がる階段があり、左手には靴がたくさん入る下駄箱。玄関を上がって案内された部屋は、共同の台所の真ん前で、僕の部屋を通り抜けて進んだ左手にトイレがあった。8畳と縁側的な板間のある部屋と、共同の台所に共同のトイレ、それと掛け流しの温泉が使える宿。リニューアルしたようでとてもキレイ。

バックパックを部屋の隅に置いていると、宿主さんが部屋の説明をしながら奥側にある掃き出し窓のカーテンを開けた。掃き出し窓の右手側には洗面台があり、左手には壁に据え付けられた食器棚があった。食器棚にはいろんな器が置いてあり、部屋から台所に持っていって使うようだ。


そんな初めての体験をひと晩経て、少し慣れてのんびりしたあと、私はカメラと文庫本をお供に散歩に出かけた。


宿を出て左側、西に向かって細めの歩道を歩いていく。道路向かいには小学校があり、大きな校庭が見える。道路沿いには一軒家が並んでいて、なんとなく、なんとなくだがこのあたりの生活を感じさせてもらった。その先にある橋を越えると急に建物が無くなっていく。その中の一つ、2階建てのアパートの横の道を抜けて、少し南にある山側の方へと歩く方向を変えてみた。

舗装されていない、アパートの前の駐車場に向かう道を歩いていくと、まだ刈り取られていない頭を垂れた金色の稲穂の向こうに、アスファルトの道路が見える。駐車場を通り抜けてそこに出ることはできたのだが僕は、田んぼの畦道を通らせてもらうことにした。


風の谷のナウシカに出てくるような、そんな金色の野を歩く。ちょうどこの頃に読んでいた小説で、秋、のことを、とき、と読んでいた。収穫の時、であり、タイミング。今ふり返ると、この金色の野を歩いている頃、私は必要とするすべてのものに出逢っていたのかもしれない。でも私は当時、そんなことにも気づかず、ただただのんびり、初めての湯治の時間を過ごしていた。


その畦道を通り抜けると写真の道に出てくる。ほのぼのとしたとても心地いい散歩の時間を過ごした。こういった五行を感じやすい場所はとても身体が癒される。アスファルトやビルで覆われた都会では感じることのできない、地球そのもののエネルギーを感じる。実際、ほんとにそれを感じているのかどうかはわからないが、僕にとって心地いい、それが何よりのこと。

こうして私たちのまわりには、目に見えないエネルギーや想いがたくさん巡っている、そう思う。何の根拠もないが、旅する生活の中で体感してきたこと。そのエネルギーや想いに目を向けること、実はそれが僕らが自分の人生を生きていくために必要なことではないのだろうか。


目に見えるものも大切だし、目に見えないものもきっと大切なはず。どちらかではなく、どちらも必要なのだ。そんなバランスを必要とする時代にもう、すでに突入している。思考することと感じることのバランス、前向きな自分と後ろ向きな自分とのバランス、そんなニュートラルな自分でいられる環境、そんな環境をつくりたい。だから僕は、村をつくる、と言いはじめたのかもしれない。

ダイアログのある暮らしを実践している、村のようなコミュニティを 2017 年の終わり頃までにはつくって、実際に生活をはじめたい。ダイアログを重ねながら、自分たちで自立して生きていく、そんなコミュニティ。生きるために食べること、丁寧にそれを繰り返すコミュニティ。


僕はこの道を歩いたことできっと、また僕の人生の道をはっきりと自分の中に見出すことができたのだと思う。そんな機会がありがたい。こうやって未来が僕を導いてくれている、そんな風に思う。だから安心して今を大切に生きること、そうすれば自然と未来につながっていくのだ。


この地に来れたご縁に心から感謝。




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